『小説現代』(講談社)2020年8月号に掲載された、大木亜希子の小説『シナプス』を全篇公開します。 タイトルの通り、30歳の女性が週刊誌の世界で奮闘する物語です。 ボクサーパンツから、わずかに柔軟剤の香りがした。 先生の奥さんがセレクトしたであろう、ローズの香り。 それを今夜は私がいただきます、と妙に厳かな気分になる。 けれども直後に、キャップ一杯の柔軟剤を洗濯機にトロッと垂らす奥さんの姿が眼前にチラつき、私の呼吸は一時停止した。 そのあいだも先生の舌は私の首筋を行ったり来たりして、うなじは柔らかく濡れていく。 ふっくらとした大きな手が私の両頬を包み込み、耳の裏
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