【書評】処女でも童貞でもない「大人になってからの初恋」が一番困る|明け方の若者たち|大木亜希子
報われない沼のような恋に落ちた主人公の5年間を2010年代の空気とともに描いた『明け方の若者たち』。カツセマサヒコさんのデビュー作です。
作家の大木亜希子さんに書評をお寄せいただきました。
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「初恋」が成就するケースは少ない。
片思いの場合、大抵は相手に気持ちを伝えることさえ出来ず、その恋は終わりを迎える。
両思いの場合も、LINEでは「好き」とか「会いたい」とか大胆な気持ちを伝えられるのに、いざ会ってしまえば緊張して、手を握るタイミングさえ掴めない。
初めてのデートでカフェに入れば、「どのように会計をスムーズに終えるべきか」という考えに取り憑かれ、財布を握りしめ
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